こんにちは。歯並び育児協会®︎ 認定講師の長野まなみです。
前編では、歯並びを支える口腔周囲筋と咀嚼筋の基礎をお伝えしました。後編は、なぜ筋肉のバランスが崩れやすいのか、そして崩れたときに起こりやすい変化と、おうちで今からできるやさしいお口のマッサージをご紹介します。
どうしてお口の筋肉のバランスが崩れるの?
「口呼吸」「やわらかい食事が多い」「姿勢のくずれ」などが続くと、口のまわりの筋肉は本来の働きがしにくくなります。すると、一部の筋肉だけが強すぎたり、逆に弱くなったりして、歯やあごを正しい位置に保ちにくくなることがあります。
とくに頬の筋肉は、いつも口を閉じようと頑張っている状態や、ストローなど“吸う力”ばかり使う生活が多いと、必要以上に緊張しやすくなります。さらに姿勢が悪いと、頭やあごの位置が前にずれやすく、そのバランスをとるために口元に余計な力が入りがちです。
こうした“頑張りすぎ”が歯を内側に押す力となり、歯並びに影響を与えてしまいます。
口腔周囲筋のバランスが崩れるとどうなる?
前編でお話ししたとおり、内側(舌)と外側(唇・ほっぺ)の力がほどよく釣り合うと、歯は無理なく並びやすくなります。どちらかに偏りが続くと、次のような変化がみられることがあります。
開咬(かいこう)
口を閉じても前歯がかみ合わない状態です。舌の位置や動きが前に出やすかったり、唇やほっぺの閉じる力との釣り合いが乱れたりすると、前歯どうしが触れにくくなります。
出っ歯・反対咬合
前歯やあごの前後関係が強調される状態です。外側の閉じる力が弱くて舌が前へ働きやすい、あるいはその逆など、筋肉のバランスの偏りが背景にある場合があります。
スペース不足
歯が並ぶ場所が狭く感じられる状態です。舌の内側からの支えが弱く、頬の外からの力が勝ちやすいと、歯列が内向きにまとまりやすくなります。
舌突出癖(ぜつとっしゅつへき)
飲み込むときなどに舌が前に出て前歯に力がかかる状態です。内側の力が前方向へ働きやすいと、前歯に影響が出やすくなります。
お口ポカン(口唇閉鎖不全)
唇を閉じる力が弱く、口が開きがちになる状態です。外側の閉鎖力が不足すると、口唇が自然に閉じにくくなります。
なぜ“お口のマッサージ”が歯並びに役立つ?
口のまわりの筋肉の緊張(かたさ)とゆるみのバランスが崩れていると、唇が閉じにくい・口呼吸が増えるなどのサインにつながります。具体的には——
唇が閉じにくい → 前歯が押し出される
頬の筋肉が強すぎる → 歯列が内側に押される
舌の筋肉とのバランスが崩れる → 噛み合わせに影響が出る
といったことが起こるのです。
そこで、親子でできるやさしいマッサージで、こわばりをほぐして動きやすさを取り戻すことが、日常の第一歩になります。
おうちで今からできるやさしいお口のマッサージ
マッサージのポイント
リラックスしたタイミングで行いましょう。
気持ちよい力加減で、無理のない範囲が基本です。
仕上げみがきのついでなど、生活の流れにのせると続けやすくなります。
各手順では、清潔な指でやさしく触れます。
お口ぽかんが気になったら —内側/外側から整えるケア—
生活のリズムに合わせて、1回が短時間でもOK。お子さんの表情を見ながら、気持ちよい力加減で無理なく続けましょう。
—— 内側(おくちの中)をほぐす
頬の内側(歯ぐきとの境目)
頬筋、咬筋の深い部分へアプローチ。
清潔な指で内側から頬と歯ぐきの境目あたりに人差し指を当て、やさしく上方向に押し広げる。唇の内側
上唇挙筋・オトガイ筋をゆるめる。
人差し指と親指でそっと挟み、くるくる回したり、ゆっくり広げたりする。
—— 外側(おくちの外)をほぐす
口角まわり
口輪筋・口角下制筋をゆるめる。
口角をつまみ、軽く上下左右にゆらしたり、円を描くように回す。あごの外側
オトガイ筋をゆるめる。
親指を下唇の下に、人差し指を顎下に添えて固定し、くるくると小さく回す。
「歯並びは遺伝だけではなく、毎日の筋肉の使い方やくせの積み重ねでも形づくられる」 —— そんな視点が、少し身近に感じられたらうれしいです。
とくに口腔周囲筋のバランスは、歯並びだけでなく、お顔の印象や呼吸、食べ方、発音にも関わる大切な要素です。
親子のふれあいの時間に、仕上げ磨きのついでに、お口まわりをやさしくほぐす。それだけでも、筋肉は少しずつやわらかくなり、機能のバランスも整いやすくなっていきます。
特別な器具がなくても、「おうちで」「今から」「親子で」できることがたくさんあります!
お子さんの笑顔を守るために、今日から一緒に始めてみませんか。
ぜひ「筋肉を意識したお口のケア」を親子で楽しんでみてくださいね。
連載コラム|子どもの歯並びは遺伝だけじゃない!お口の筋肉を育てよう(全2回)
- 後編:筋肉を意識したお口のケア

歯並び育児® 認定講師
長野まなみ
歯科衛生士
2児を子育て中の歯科衛生士です。
心と身体の土台を整え、”今”を一生ものの親子の絆に。 そんな歯並び育児を広めたくて、現場を離れ認定講師になりました。 日本の子どもの未来を明るく照らしたいです!!