こんにちは。歯並び育児協会 認定講師の宮永祐希です。
子どもの歯並びや噛み合わせのこと、「うちの子、大丈夫かな?」と不安になることはありませんか?
このコラムでは、そんなママたちのヒントになるお話を前半・後半の2回に分けてお届けします。
中心咬合位と習慣性咬合位〜噛み合わせには“本当の位置”と“いつもの癖”がある?〜
歯の噛み合わせを見るとき、私たちがまず確認するのは「中心咬合位(ちゅうしんこうごうい)」です。これは上下の奥歯がしっかり合わさって、最も安定している噛み合わせのこと。いわば「本来の噛み合わせの位置」です。
一方で、日常的な癖や習慣によってずれてしまう「習慣性咬合位(しゅうかんせいこうごうい)」という噛み合わせもあります。
たとえば、普段からちょっとアゴを前に出す癖のある子は、写真では受け口(下の歯が前に出ているような状態)に見えても、実はきちんと噛んでみたら正常だった…なんてこともあるんです。
見た目だけでは分からない。
だからこそ、「これは本当にしっかり噛んでいる時の噛み合わせかな?」という視点が、とても大切になります。
噛み合わせにはいろいろなタイプがあることを知っておこう
次に、「どんな噛み合わせか?」を見ていくことも重要です。代表的なものには、こんな分類があります。
- 正常咬合(せいじょうこうごう):
理想的な噛み合わせ。上下の歯がバランスよく噛み合っています。 - 過蓋咬合(かがいこうごう):
噛み合わせが深く、下の前歯がほとんど見えない状態。噛む力が強い子に多いです。 - 開咬(かいこう):
奥歯は噛んでいるのに、前歯が当たらない状態。指しゃぶりや舌のクセが影響していることも。
また、前から見たときの“歯並びの出方”についても、次のような分類があります。
- 1級(正常):
上の前歯と下の前歯のバランスが良く、自然な噛み合わせ。 - 2級(出っ歯):
上の前歯が前に出ている状態。唇の力が弱い子に見られることがあります。 - 3級(受け口):
下の前歯が前に出ている状態。アゴの使い方のクセが関係することも。
判断にはいろいろな視点が必要です
ここまで理解できてくると、お子さんの口元を見て、「この噛み合わせ、大丈夫かな?」「矯正が必要かも?」と気になってくる方もいるかもしれません。
でも、目に見える歯並びの状態だけで「矯正が必要かどうか」を判断するのは、実はとても難しいことです。
なぜなら、先ほどの「中心咬合位」と「習慣性咬合位」の違いをはじめ、噛み合わせには多くの要素が関わっており、私たち専門家でもさまざまな点から慎重に診て判断する必要があるからです。
ただし、日々の様子の中に、噛み合わせのヒントはたくさんあります。
「なんだか気になるな…」と、今の噛み合わせに不安を感じたときは、自己判断をせず、一度専門家に相談してみることをおすすめします。
歯並びの背景には一人ひとりの「育ち」がある
「歯並びが悪いかも…」と感じたとき、つい見た目だけで不安になってしまいますよね。
でも本当に大切なのは、その子が「どんなふうにお口を使っているのか?」という、今の歯並びに育ってきた「背景」を見ること。ちゃんと噛めているかどうか、姿勢や食べ方、生活のクセなどにも、たくさんのヒントが隠れています。
歯並び育児で、私たち認定講師が見ているのは、歯そのものだけではなく、その子の「育ち」や「暮らし」の中にあるヒントです。
お子さんの歯並びが少し気になっているママにとって、少しでも安心できるヒントになればうれしいです。
次回のコラムでは、「矯正が必要かどうか? その判断のポイント」についてお話しします。

一般社団法人 歯並び育児協会マスター講師
宮永祐希
歯科医師
大阪大学 歯学部卒業
日本小児歯科学会会員
5児を子育て中の歯科医師です。
歯並び育児を知らない育児、知ってからの育児、両方の経験があるからこそキレイな歯並びを育てることがその子の人生にとって見た目以上の価値があると実感しています。
我が子の将来を明るくしたい、そんなママを全力でサポートしています。