指しゃぶりは「やめさせない」が正解?自然に卒業へ導く5つの土台(前編)

やめさせるより大切なこと

こんにちは。歯並び育児®協会 認定講師の吉嶺桃子です。

子どもの「指しゃぶり」は、赤ちゃんのころは愛らしい姿として受け取られます。
けれど、3歳・4歳ごろになっても指しゃぶりが続くと、「そろそろやめさせたほうがいいのかな」「歯並びに影響しないかな」と不安になる方も多いでしょう。

でも、“やめさせる”ことに焦る前に見てほしいことがあります。
それは、“やめられる身体と心の準備”ができているかどうかです。

指しゃぶりをやめるには、無理に止めさせるのではなく「自然に卒業できる力」を育てることが大切です。
このコラムでは、指しゃぶり卒業に向けた“5つの土台”を2回に分けてご紹介します。

「指しゃぶり」はなぜやめられない?悪い癖ではなく身体と心のサイン

指しゃぶりは、安心したい・落ち着きたいという心のサインでもあります。
眠いとき、疲れたとき、緊張したとき——。
子どもは自分を落ち着かせるために、無意識に指をしゃぶることがあります。

けれどそれだけではありません。
実は、指しゃぶりには身体の発達や口の感覚の使い方も深く関係しています。
つまり、「やめられない」のではなく、やめるための身体と心がまだ育ちきっていないだけなのです。

「指しゃぶり=悪い癖」と決めつけて叱るのではなく、
“どうして今、この子は指をしゃぶっているのかな?”と見つめ直す。
その視点こそが、卒業への第一歩です。

無理にやめさせる前に確認!指しゃぶりと全身の発達・姿勢の関係

身体に力が入りやすい子や、左右のバランスが偏っている子は、
無意識に指をしゃぶってリラックスしようとします。

たとえば、抱っこの向きがいつも同じだったり、
ボールを蹴るときに片足ばかり使っていたり。
そうした姿勢や左右差の積み重ねが、身体の軸のずれにつながります。
このバランスを整えることが、指しゃぶりの改善にもつながります。

指しゃぶりは「口の問題」だけでなく、全身の発達や姿勢と深く関係しているのです。

第1の土台:身体の緊張を緩め、安心できる状態をつくる

身体に緊張があると、子どもは無意識に指しゃぶりで落ち着こうとします。
まずは、身体をゆるめる=安心できる状態をつくることから。

背中や肩をやさしくなでたり、深呼吸を一緒にしたり。
安心を感じられる身体づくりが、自然にやめられる準備の第一歩です。

第2の土台:抱っこや遊びで整える“身体の左右差”

発達の過程で利き手・利き足の偏りが強くなると、バランスを取るために指しゃぶりが現れることがあります。
日常でできる工夫は、抱っこの向きを時々変えること。
また、ボール遊びや平均台などで、体の両側をバランスよく使うのもおすすめです。

こうした遊びの積み重ねが、姿勢の安定につながり、指しゃぶりを必要としない身体へと導きます。

第3の土台:将来の歯並びにも影響する“舌の正しい位置”を育てる

舌の位置が不安定な子は、口の中を探るように指を入れてしまうことがあります。
とくに、舌が上あご(スポット)につかない場合は要注意です。

– 唇と舌の筋力をつける遊び
– 食事や発音の中で「舌の位置」を意識する工夫

こうした取り組みで、口の中の安定=口腔機能が整うと、指しゃぶりは自然に減っていきます。
舌の位置が整うことは、将来の歯並びにも大きく関わります。

無理にやめさせなくても大丈夫

指しゃぶりをやめさせようとするよりも、
「やめなくても安心していられる身体と心」を整えることが大切です。
その土台ができると、子ども自身が「もう大丈夫」と自然に手を離せる日がやってきます。

次回の後編では、さらに深い2つの土台
「吸啜反射(きゅうてつはんしゃ)のやり直し」と「感覚を入れる取り組み」、
そして保護者の関わり方についてお伝えします。

焦らず、寄り添いながら。
それが、子どもが安心して指しゃぶりを卒業していくためのいちばんの近道です。

一般社団法人 歯並び育児協会 認定講師

吉嶺桃子

歯科衛生士

2児の母であり、歯科衛生士です。
我が子の歯並びに悩んだことをきっかけに「お口の育ちは、毎日の関わりで変えられる」ことを実感しました。
“歯並びに悩まされない人生”を育むお手伝いを通して、未来を担う子どもたちに、希望あふれる今と未来を届けたいという思いで日々活動しています。

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