ママが知っておきたい子どもの噛み合わせと矯正の基本|後編|矯正が必要?保護者が迷った時の判断ポイント

こんにちは。歯並び育児協会 認定講師の宮永祐希です。

コラムの前編では「噛み合わせの見方」について、ママ達に知っておいて欲しいポイントをお話ししました。後編となる今回は「うちの子は矯正治療が本当に必要なのか?」と言う、多くのママたちが感じる疑問に対して、分かりやすくお伝えしていきます。

前編はこちら:
噛み合わせをどう見る?歯科医師ママが教える歯並びのチェックのコツ

矯正って、必要? それともまだ大丈夫?

「歯並び、ちょっと気になるけど……矯正って今すぐ必要なの?」

そんなふうに感じているママはとても多いです。

SNSや保健師さんとのやり取り、ママ友との会話で、「うちの子、もう矯正始めたよ」「歯並びは早く手を打った方がいいらしいよ」と聞くと、なんとなく焦ってしまいますよね。

でも実は、矯正が必要かどうかの判断には “はっきりした基準” がありません。

歯科医師によっても「このくらいなら大丈夫」と考える方もいれば、「このズレは見逃せない」と判断される方もいて、意見が分かれることも珍しくありません。

つまり、矯正が必要かどうかは、0 か 100 かの “白黒” で決まるものではなく、グラデーションのように幅があるんです。

「矯正をしなければダメ」と決めつけず、「今の状態を理解した上で、どうするかを考える」ことが大切なんですね。

あごの成長期を逃さないために、早くから矯正治療を始めれば、それでいいの?

最近は「早期矯正」に注目が集まり、「早い方がいい」「成長期を逃すな」といった言葉をよく目にします。

たしかに、骨格や発達に働きかけやすい時期があるのは事実です。
でも、単純に「早くから矯正治療を始めれば安心」と言うことでもなければ、「今すぐ始めないと手遅れになる」ということでもありません。

たとえば、妊娠中からお口育てを意識していたママと、5歳で初めて歯並びを気にし始めたママとでは、スタート地点も育て方も違います。

それぞれにできること、考えなければいけないことがあるんです。

そして、歯並びは “今の歯並び” だけを見て判断するものではありません。

「この子はどんな姿勢で座ってる?」
「舌はどんなふうに動く?」
「口は閉じている?」

そんな日々の積み重ねが、これからの歯並びを作っていきます。

歯並びを治す” ことよりも、”歯並びを育てる” 視点を持つことで、矯正が必要なケースを減らしたり、治療を軽くできる(例えば歯を抜かなくて済む等)可能性も高まるんです。

歯並びだけで判断できないこともたくさんあります

私たち歯並び育児協会では、認定講師がSNS等で日々様々なご相談を受けています。
また、オンラインで開催している「矯正いらずの歯並び育児講座」では、受講ママからお子さんのお口元の写真や動画など、たくさん寄せられます。

その中でよくあるのが、お子さんの歯並びの写真から、「この歯並び、大丈夫ですか?」と言う質問です。

もちろん、お写真から分かることもあります。でも、実際にはそれだけで判断するのはとても難しいことなんです。なぜなら、「なぜこの歯並びになったのか」その原因を紐解くには、歯並びという「結果」だけでは見えてこないからなんです。

たとえばこんなことも歯並びに影響します:

  • 食べるとき、いつも片側だけで噛んでいる
  • 舌を前に突き出すような癖がある
  • 寝る姿勢がいつもうつ伏せや口呼吸になっている

実際、講師の間でも「写真では反対咬合に見えたけど、実際は癖の問題だった」「食事の様子を聞いてみたら、噛めていない原因が姿勢にあった」なんてことはよくあります。

だからこそ、歯並びは “結果” であって、”判断材料のすべて” ではありません。

「なぜ今こうなっているのか?」
「どんなケアや習慣が、この子にとって大切なのか?」

そんな視点を持って、生活習慣や体全体から考えていくことが大切になってきます。

矯正と組み合わせる「歯並び育児」という新しい選択肢

矯正が必要と判断されたときも、矯正だけに頼るのではなく、「歯並びを育てる」取り組みをあわせて行うことで、より自然な形で歯並びが整っていくこともあります。

「歯並びを育てる」取り組みとして、私たちが提案しているのが「歯並び育児」です。これは、子どもの成長や生活習慣に合わせて、歯並びの土台から整えていく新しいアプローチです。

実際に、矯正と併用することでこんなメリットが期待できます:

矯正の効果を最大限に活かせる

歯並び育児では、食事・睡眠・姿勢など、歯並びに影響する「生活習慣」にもアプローチします。その結果、歯並びの土台から整うことで相乗効果が期待できます。

矯正後の「後戻り」を防ぎやすくなる

矯正治療で歯並びだけ整えても、生活習慣がそのままだと、歯並びは元に戻ってしまうことも。歯並び育児で日常のクセや姿勢を整えることで、安定した歯並びをキープしやすくなります。

原因そのものにアプローチできる

口呼吸や舌癖、うつ伏せ寝や頬杖といった“生活のクセ”にも対応できるのは、歯並び育児の強みです。矯正か歯並び育児か、どちらかを選ぶだけではなく、併用することでお互いのよさが活きてくる、そんな選択肢もあります。

正解は、ひとつじゃない

子どもの歯並びの話になると、「どの方法が一番いいのか?」「どうしたら失敗しないのか?」と、”正解探し” をしたくなってしまうものです。

でも実は、どれも “絶対的な正解” ではないかもしれません。

矯正を選ぶかどうか、歯並び育児に取り組むのか、それを始めるタイミングも、家庭によってベストは違うのではないかと私は考えます。お子さんの発達や性格、保護者の考え方、生活スタイル、経済的なこと……それぞれの背景があるからです。

そんな中、私たち認定講師達が大切にしているのは、「歯並びを“育てていく”」という視点。
すぐに答えが出ないことも多いけれど、ママやパパが「この子に合った道を選べた」と感じられることが、いちばんの “正解” だと考えています。

歯並び育児って、実はすごく前向きなこと

ここまで読んでくださったあなたは、きっと「今できることがあるなら知りたい」「子どもの未来のために、いい選択をしたい」と思っている方だと思います。

歯並び育児は、歯並びを「治す」ではなく「育てる」ことを目指しています。
「育てる」ことで、矯正が必要なくなる可能性を高め、それが将来的に心身の健康にもつながっていくのです。

私たち講師は、そんなママたちの想いに寄り添いながら、わかりやすく、専門的な情報を届けています。

歯並び育児をもっと学びたい方へ

協会では、オンラインでの歯並び育児講座や地域で開催するイベント、リアル講座などを通して、「子どもの成長を見守りながら、未来をつくる」サポートを行っています。
キレイな歯並びを育てることから、子ども達の健やかな成長をお手伝いする、そんな歯並び育児に興味がある方は、ぜひお気軽にご相談くださいね。

ママが知っておきたい子どもの噛み合わせと矯正の基本

前編: 噛み合わせをどう見る?歯科医師ママが教える歯並びのチェックのコツ

後編: 矯正が必要?保護者が迷った時の判断ポイント

一般社団法人 歯並び育児協会マスター講師

宮永祐希

歯科医師

大阪大学 歯学部卒業

日本小児歯科学会会員

5児を子育て中の歯科医師です。

歯並び育児を知らない育児、知ってからの育児、両方の経験があるからこそキレイな歯並びを育てることがその子の人生にとって見た目以上の価値があると実感しています。

我が子の将来を明るくしたい、そんなママを全力でサポートしています。

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