一般社団法人歯並び育児協会の代表理事であり歯科医師である阿部奈央に、全20回にわたり、その人生や活動をテーマにインタビューを行う連載企画です。第3回となる今回のテーマは「人生で最も影響を受けた出来事は?」について。聞き手は、同じく歯並び育児協会認定講師で歯科衛生士の佐々木そのか。
阿部奈央(あべなお):
歯科医師 / 早川歯科クリニック副院長 / 一般社団法人歯並び育児協会代表理事
広島大学歯学部を卒業後、研修医としての経験を経て、一般歯科に従事。長男の妊娠をきっかけに、子どもの歯並びと成長を支える「予防としての育児」に強い関心を持つようになる。
矯正治療は多くの子どもの歯並びを整える優れた技術である一方で、痛み・期間・費用の負担から治療を選べないケースがある現実を目の当たりにしてきた。その経験から、「親の手で歯並びを育む」という新しいアプローチとして、2020年に「矯正いらずの歯並び育児講座」をスタート。
2021年には講師育成を開始し、2024年9月には一般社団法人歯並び育児協会を設立。医療と子どもに関する幅広い専門家たちとともに、より多くの家庭に“未来の健康と笑顔”を届ける活動を続けている。
「痒くない日があるなんて」──食習慣の見直しで気づいた「常識を疑う」こと
── 奈央さんの価値観を大きく変えた最初のきっかけは何だったのでしょうか?
一番の原点は、高校時代に何気なく始めた「食習慣の見直し」でした。当時、私は毎日当たり前のようにヨーグルトを食べていたのですが、実はずっとお腹を下し気味で……。「もしかして合わないのかも?」とふと思って乳製品を断ってみたんです。
すると3ヶ月後、驚くべきことが起きました。生まれてからずっと、体のどこかしらが痒いのが当たり前だったアトピー体質の私から、「痒み」が完全に消えたんです。「痒くない日があるなんて!」という衝撃は、今でも忘れられません。
── 「当たり前」だと思っていた不調が、食べ物で変わったのですね。
そうです。そこから私の「人体実験」が始まりました。乳製品に続いて小麦や砂糖も控えるようになると、肌の調子はさらに安定し、花粉症の揺らぎも激減。
この経験から学んだのは、「教科書や医者が言う〝正解〞が、必ずしも〝私の真実〞とは限らない」ということです。世の中の常識を一度疑ってみる、という視点がこの時私の中に芽生えました。
介護と自宅出産が教えてくれた「自分で選ぶ医療」
── 大学時代の「祖父の介護」も大きな経験だったと伺いました。
はい。認知症を患った祖父の排泄介助などを両親が懸命に行う姿を間近で見て、「老いるとはどういうことか」を突きつけられました。
「私たちの体は、本当はもっと元気でいられるはずなのに、無意識のうちにその力を損なっている。なんて勿体ないんだろう」と感じたんです。「未病のうちに整えることの価値」を、歯科医師になる前に身をもって知ることができたのは大きかったですね。
── その後の「自宅出産」という選択も、かなり勇気が必要だったのでは?
そうですね。でも、大学病院の産婦人科で研修をしていた時、過酷な勤務でボロボロになりながら働く先生たちを目の当たりにしたんです。「この人たちが、病気ではない健康な妊婦を診るなんて、何かバランスがおかしい」という違和感がありました。
そんな時に助産師の柴田星子さんのブログに出会い、「出産には病院以外の選択肢もある」と知りました。実際に自宅出産を経験し、3日間の長いお産を乗り越えた時、「人と違う道を自分で選び、やり切れた」という強烈な自信が生まれました。この自信が、今の活動の大きな支えになっています。
フォロワー50人から起業へ──久美さんとの出会いが歯並び育児を生んだ
── 今の協会が生まれるきっかけとなった、久美さんとの出会いについて教えてください。
産後に「何か発信したい」と始めたInstagramは、半年経ってもフォロワー50人程度でした。でも、諦めずに飛び込んだ起業塾で、今のビジネスパートナーである久美さんに出会ったんです。
私のアンケート回答の熱量に驚いた久美さんが、「歯科医師ママが伝える『歯並び育児』ってどう?」と提案してくれて。その一言が、点と点だった私の経験を一本の線に繋いでくれました。
人生を変えるのは「試してみる勇気」から
── 最後に、今この記事を読んでいるお母さんたちや講師の方へメッセージをお願いします。
私の人生は、「とりあえず試してみる」という実験の連続でした。常識と言われることでも、自分に合わないと思えば手放していい。逆に、世間では変だと言われることでも、自分が心地よいならそれが正解です。
「人生を変えるのは、試してみる勇気から」。まずは自分を整え、心地よくいることを選んでください。その軽やかな一歩が、必ず未来を創っていきます。
今回のインタビューを通じて、食習慣の見直しや介護・出産という実体験から「自分の体と正直に向き合う」という姿勢が、奈央さんの価値観の核にあることが見えてきました。
次回は、そんな奈央さんが日々の指針にしている「大切にしている言葉・座右の銘」についてお伺いします。挑戦と実験を繰り返しながら紡ぎ出された言葉には、どんな力が宿っているのか——どうぞご期待ください。
一般社団法人歯並び育児®協会 認定講師
佐々木そのか
歯科衛生士
臨床経験23年の現役歯科衛生士、4児の母。
上の子2人は矯正治療中、下の子2人は歯並び育児®で歯並びが変化中。 自身の経験から、歯並びは『悪くなってから治す』ではなく『予防し、育てる』ことの重要性を強く実感。
認定講師として講座生さん達をサポートするほか、地域の保育園や子育て施設などで定期的にセミナーを開催。
器具に頼らなくてもきれいな歯並びを育てられるということを、より多くの方に伝えるために活動中です。