【連載】阿部奈央の「人生と活動」をひも解く──第2回「価値観を育てた幼少期」

一般社団法人歯並び育児協会の代表理事であり歯科医師である阿部奈央に、全20回にわたり、その人生や活動をテーマにインタビューを行う連載企画です。

第二回となる今回は、幼少期の経験を通してどのように価値観が育まれていったのかを聞いていきます。
聞き手は、同じく歯並び育児協会認定講師で歯科衛生士の佐々木そのか。

阿部奈央(あべなお):
歯科医師 / 早川歯科クリニック副院長 / 一般社団法人歯並び育児協会代表理事

広島大学歯学部を卒業後、研修医としての経験を経て、一般歯科に従事。長男の妊娠をきっかけに、子どもの歯並びと成長を支える「予防としての育児」に強い関心を持つようになる。

矯正治療は多くの子どもの歯並びを整える優れた技術である一方で、痛み・期間・費用の負担から治療を選べないケースがある現実を目の当たりにしてきた。その経験から、「親の手で歯並びを育む」という新しいアプローチとして、2020年に「矯正いらずの歯並び育児講座」をスタート。

2021年には講師育成を開始し、2024年9月には一般社団法人歯並び育児協会を設立。医療と子どもに関する幅広い専門家たちとともに、より多くの家庭に“未来の健康と笑顔”を届ける活動を続けている。

外で駆け回り、本の世界にも没頭していた少女

──奈央さんは、どんな子ども時代を過ごされていたのでしょうか?まずは幼少期のお話から伺わせてください。

家のすぐ隣に公園があって、自然と外遊びが多い子どもでした。走り回って、鬼ごっこをして、気づけば泥だらけになっているようなタイプでしたね。

──すごく活動的だったのですね。家で過ごす時間はどんな感じだったのでしょう?

本の世界にどっぷり浸かる子でしたね。動物と話せる医者が主人公の児童文学『ドリトル先生』との出会いが、私の読書人生の始まりでした。そこから岩波少年文庫を読み漁るようになって……。気づけば完全に“本の虫”。物語に没頭する時間は、幼少期の大切な楽しみのひとつでした。

──その“没頭できる力”は、当時からすでに備わっていたのでしょうか?

そうですね。学校の勉強は公文で先取りしていたので、授業中にも「終わったら本を読んでいていいよ」と先生に言われるほど夢中になりました。

“漫画禁止”の家だからこそ夢中になった伝記漫画

──ご家庭には、漫画やテレビに関する独自のルールがあったとお聞きしました。

そうなんです。「漫画禁止」「テレビ最小限」というルールがあって。でもその制限があったからこそ、“伝記の漫画”にどハマりしました。
織田信長やキュリー夫人など、あれは“漫画”だけど“勉強”という扱い。合法的に読めたので、正々堂々と夢中になれたんです。

──ちなみに、ご両親が読んでいた漫画をこっそり読んでいたと伺いました (笑)

はい!家にはなぜか『名探偵コナン』や『犬夜叉』が置いてあって、「これ絶対、親が読んでるでしょ…!」と幼心に突っ込みながらこっそり読んでいました。

習い事づくしの日々が育てた、礼儀と所作

──幼少期には習い事も多くされていたそうですね。どんなことをされていたのでしょう?

スイミング、公文、ピアノ、そして日本舞踊。週4つの習い事に通っていました。

──その中でも特に印象に残っているものはありますか?

今思い返すと、日本舞踊はとても特徴的な環境でしたね。
お寺の教室で、芸歴で上下関係が決まる世界。節分や初詣にはお雑煮をふるまったり、来客を迎えたり、接待のような経験も多かったです。

──その経験は、今の奈央さんにも影響していると感じますか?

そうですね。礼儀や立ち居振る舞いなど、あの頃に身についたことが今に活きていると思います。

中学受験の背景にあった“自分の居場所を求める気持ち”

──中学校は私立受験をされたそうですね。受験はご自身の意思だったのでしょうか?

はい。一つ年上の兄が自閉症だったこともあり、同じ学校に通うことがつらい時期がありました。からかわれたこともあって、「同じ学校には行きたくない」という思いが強かったんです。

──その選択には、幼いながらも自分の居場所を求める切実な気持ちがあったのですね。受験に向けて、塾にも通われたりしたのでしょうか?

そうですね。塾には通い始めました。ただ、本屋に立ち寄ってサボることもしばしば……。
塾から「来ていません」と家に連絡がきて発覚したこともありました (笑)
本当に読みたい本があったら、そっちに行っちゃうんですよね。

──好きなことにまっすぐで、自分の感覚に素直だったのですね。

興味が向いたら一直線。目的があることには全力投球。これは今も変わっていないと思います。

“自分の感覚に素直に動く子”だった日々

──学校生活ではどんなふうに過ごされていたのでしょうか?

やる気スイッチが極端でした。音読の宿題が大っ嫌いで、自分でスタンプを押して提出したらバレたことがあります (笑)
でも一方で、学級委員長をやったり、リレーの選手に選ばれると全力になったり。頑張るときは頑張るけど、オフのときは完全にサボる。そんな子でしたね。

──そのメリハリの感覚も、幼少期から自然と身についていたのですね。

そうだと思います。全部を頑張るのではなく、“大事なところで力を出す”という感覚がこの頃からありました。

母になり“時代を超える絵本”と再会する喜び

──今、母として子どもと向き合う中で、幼少期の自分を思い出す瞬間はありますか?

たくさんあります。“そらまめくんのベッド”や“クレヨンくんシリーズ”の絵本が大好きだったんですが、今でも本屋さんに並んでいるんです。懐かしいですよね。自分が好きで読んでいた絵本を、今は子どもと一緒に読んでいる。その時間が本当に幸せで……。
時代は流れても、“いい絵本”はずっと愛され続けるんだなと感じます。

──絵本と同じように、遊びの記憶がつながる瞬間もありますか?

ありますね。テレビはほとんど禁止だったのに、なぜかポケモンのゲームだけはやらせてもらえたんです。白黒画面の初代ゲームボーイからやり込んで、第5世代くらいまではしっかり遊んでいました。

今は子どもがレゴ、特にスーパーマリオシリーズに夢中で、一緒に遊ぶ時間が癒しになっています。
子どもの頃に夢中になった“好き”という感覚って、大人になっても形を変えてちゃんと残るんだなと感じます。

今回のインタビューを通して見えてきたのは、「読書が好き」「ゲームも好き」「習い事もしていたけれど塾はサボる」──そんな“普通”の中に、奈央さんらしい“特別さ”が息づいていたということ。
ひとつひとつの選択や寄り道が、のちの人生を形づくる“種”になっていたのだと感じました。

阿部奈央の幼少期に根づいた“夢中になる力”は、いつ、どんな出来事によって人生の軸へと結びついたのでしょうか?

次回は、阿部奈央の価値観を大きく変えた“人生のターニングポイント”に迫ります。
どんな瞬間が考え方を揺さぶり、今の生き方へとつながっていったのか──。
幼少期から続く軌跡の中で、その出来事がどんな意味を持っていたのかを探っていきます。どうぞご期待ください。

一般社団法人歯並び育児®協会 認定講師

佐々木そのか

歯科衛生士

臨床経験23年の現役歯科衛生士、4児の母。

上の子2人は矯正治療中、下の子2人は歯並び育児®で歯並びが変化中。 自身の経験から、歯並びは『悪くなってから治す』ではなく『予防し、育てる』ことの重要性を強く実感。

認定講師として講座生さん達をサポートするほか、地域の保育園や子育て施設などで定期的にセミナーを開催。

器具に頼らなくてもきれいな歯並びを育てられるということを、より多くの方に伝えるために活動中です。

連載インタビュー|阿部奈央の「人生と活動」をひも解く

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